【三菱重工業 劇場型改革の真価#10】苦手なセミオーダー設計 – ニュースイッチ Newswitch

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三菱重工業長崎造船所大型客船連続不審火 コメントはまだありません



 国内シェア5割を握る鉄道車両用空気ブレーキの生産拠点、三原製作所古浜工場(広島県三原市)の一室。壁を覆い尽くす大判用紙には調達から出荷までのスケジュールが時刻管理され、多角的な検討を加えた跡が付箋に刻まれる。改善の伝統手法「巻紙分析」だ。

 三菱重工業が2006年から本格化した「ものづくり革新活動」。02年に長崎造船所で発生した客船火災をはじめ、現場疲弊に端を発したモノづくり力の弱体化を深刻な経営課題として捉え、佃和夫、大宮英明ら当時経営トップによる陣頭指揮のもと、全社一丸で取り組んだ。

 古浜工場は巻紙分析をベースに、購入品の不良率を7分の1に、リードタイムを半分以下に短縮するなど改革の優等生として大きな成果を上げた。

 生産改革に辣腕(らつわん)を振るったのが当時副社長だった青木素直(現特別顧問)。「モノづくりは製造業のビジネスそのもの。匠(たくみ)の技に頼るものではない」との信念を掲げ、徹底した標準化に取り組んだ。

 青木によると「図面を増やすほどトラブルの種になり、サプライヤーは値上げを要求する」という悪循環に陥るという。三菱重工の製品を分析したところ「平均7割は図面を変えず、同じ部品を使えることが分かった」。

 ガスタービンをはじめ、大型製品を顧客仕様に沿って設計、製造する文化が根付く三菱重工にとって、プラットホーム(車台)を共通化する自動車のような、半ば”セミオーダー“設計は苦手。

 得意としてきたのは電力会社をはじめとする国内優良顧客に寄り添う形の安定した”計画生産“であり、これは技術や品質を磨く上で財産となったが、リーマン・ショックなど景気低迷で内需がしぼんだ途端、多くの無駄が顕在化し、収益の足かせとなった。

 海外に出ようにもマーケティング力が弱く、顧客視点のモノづくりができない。急激な環境変化に追随できない内需依存のぬるま湯体質からの脱却をもくろんだのがものづくり革新活動の本質だ。ターボ冷凍機など組立工数が半分になった製品は多い。工場にはキャッシュフロー経営の重要性もすり込まれた。

 だが、これはグローバル競争のスタートラインに立ったに過ぎない。今は為替が優位に働いているが「将来、新興国の製造競争力が、日本の改善のスピードを追い越すのは確実」(アナリスト)。戦線を広げながら顧客基盤を守れるか―。

 インダストリー4・0などいわゆるIoT(モノのインターネット)の真の狙いが顧客囲い込みにあるのは言うまでもない。米ゼネラル・エレクトリック、独シーメンスも中国などの追い上げを見据え、M&A(合併・買収)を通じて顧客網を拡大。そこに遠隔監視などサービスを付加し、長期継続したビジネスを指向するのもそのためだ。

 「我々なりのAI(人工知能)、IoTへのアプローチ考える。手間がかかっても多くのパートナーと試行錯誤する中でGE、シーメンス対抗軸をつくる」と社長の宮永俊一は断言する。開始から10年。「ものづくり革新活動」は新しいステージに入っている。

(敬称略)

※内容、肩書は当時のもの





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