年金支給漏れ 「再発防止」聞き飽きた – 中国新聞

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 またしても、年金を巡る不祥事である。公務員の配偶者らの基礎年金に一定額を上乗せする「振替加算」で、10万人を超す加入者への支給漏れが見つかった。未払い分は、総額で598億円にも達するという。

 屋台骨とするべき国民の信頼感を揺るがす体たらくである。成熟した先進国の制度とは、とても思えない。

 菅義偉官房長官は「再発防止に全力で努める」と型通りの見解を示したが、応急策にとどまってはなるまい。病巣をえぐり出し、根治のすべを見極めるべきだろう。

 今のところ、支給の実務を担う日本年金機構と公務員らの共済組合との連携不足が原因と見立てられている。加入者データが共有されていなかったり、事務処理を誤ったりしていた。

 2年前に共済年金と会社員向けの厚生年金とを一元化したにもかかわらず、事務組織は別々のままだったことが不祥事の温床になったともいえる。組織の統合は検討課題だろう。

 機構の所管官庁である厚生労働省も、批判は免れまい。情報を管理するデータベースの改修を再発防止策に挙げるが、いち早く問題点をつかみ、検証し、軌道修正できる組織づくりこそが求められる。

 というのも「振替加算」を巡る未払いは、仕組みのできた1991年から起きていたミスだったからである。今回、機構が遅まきながら、自らの総点検で全体像を把握し、対処し得たことは評価していい。新規まき直しの一歩とすべきだろう。

 年金支給の開始年齢を引き上げるという制度変更と重なり、実務がより複雑さを増していた面も見逃せない。少子高齢化の進展に伴う軌道修正は多かれ少なかれ、今後も予想される。職員研修の在り方を見直し、スキルを上げるべきだろう。

 10年前、5千万件余りの年金記録について持ち主をつかんでいない実態が明るみに出た。機構の前身である旧社会保険庁のずさんな管理による「宙に浮いた年金」問題である。

 宙に浮いた記録は2013年末の時点で、4割強が持ち主不明のままで、手掛かりさえ全くないものがその半分近くに上るとされている。

 年金の支給漏れや記録の持ち主特定には、本人からの申し出が欠かせない。加入歴の確認用に毎年通知されるようになった「ねんきん特別便」で、加入者自らのチェックが欠かせぬ時代と私たちも心得るべきだろう。

 社会保障への不安から、めでたいはずの長寿をリスクに挙げる国民が珍しくなくなった。老後を支える虎の子である年金制度の先行きは、生活設計を左右しかねない。かつて政権交代につながる火種の一つは「宙に浮いた年金」問題だった。

 発覚時に政権を率い、「最後の1人までチェックし、最後の1円まで確実に支払う」と繰り返し約束したのは安倍晋三首相にほかならない。くしくも同じ立場で再び、年金の信頼回復を背負った首相には、覚悟を決めてもらいたい。

 衆参両院の厚生労働委員会は20日の閉会中審査で、今回の支給漏れ問題を取り上げる。超高齢社会に突入した今、与野党の別なく、信頼される制度への立て直しを急がねばならない。政治の真価が問われている。





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