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脱税・申告漏れ コメントはまだありません



 英国から独立して70周年を迎えたインドを訪問し、独立記念日にモディ首相の演説を聴く機会があった。そこで再認識したのが同国が抱えるブラックマネー問題である。

 インド経済の約半分は、政府が資金の流れを把握できない現金ベースの活動とされ、その規模は1兆ドル(約110兆円)にも上る。

 昨年11月に米国でトランプ氏が新大統領に選ばれた当日、モディ首相は事前予告なしで高額紙幣の廃止を発表した。市中に流通する紙幣の9割弱を年末までに使えなくするという前代未聞の政策だ。

 古い紙幣は銀行に持ち込み、自分の口座に入金するか、新紙幣との交換を余儀なくされた。2兆ルピー(約3.4兆円)の現金が回収され、銀行口座数も急増したという。

 インド政府はデジタル社会の構築にもまい進する。現金決済を極力廃止し、口座を通じた電子決済で資金の移動を透明化する。それにより横行する脱税を撲滅すると同時に、汚職を徹底的に排除する狙いがある。現金決済が主流のインドでは、役人による賄賂の要求が常態化し、貧困層に支給される補助金も、役人によるピンハネの温床になってきた。

 切り札とするのが、前政権時に導入されたアーダールと呼ばれる生体認証によるマイナンバー制度だ。補助金申請や教育、医療サービスを受給するにはこの登録が必要で、モディ政権になって全人口の9割にまで普及した。デジタル技術を使い、国民の経済活動を全て把握しようとしている。銀行口座の利用が普及すれば賄賂もなくなる。

 キャッシュレス化により地下経済を透明にし、脱税と汚職を排除する。増えた財源を教育や衛生施設など社会基盤の整備に充てる狙いだ。インドは平均年齢27歳の「若い国」。スマホに抵抗がない世代が主導する経済のダイナミズムが、インドにはある。

(住友商事グローバルリサーチ社長 高井裕之)





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