NHKのネット配信 公共放送の役割、議論を – 中国新聞

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 NHKが、総合テレビとEテレの番組を放送と同時にインターネットでも流す「常時同時配信」の準備を進めている。会長の諮問機関は、テレビを持たずネットだけで同時配信を視聴する世帯にも受信料を課すことを認める答申を出した。十分な議論があったのか、疑問が残る。

 若者を中心にテレビ離れが進む中、新たな視聴者を得ようとする狙いが、NHKにはあるようだ。ネットユーザーにとって確かに利便性は高まるだろう。

 しかし、肥大化による民業圧迫への懸念や反発の声が出ている。特に、NHKとともに放送を支える民放の危機感は強い。年6700億円を超す巨額の受信料収入のあるNHKに「独り勝ち」されかねないと警戒するのも当然だろう。

 放送と通信の融合が進む中、NHKは、ネット同時配信を進めて公共放送から「公共メディア」への変化を目指している、という。ただ、それが何かはよく分からない。

 放送法でNHKの業務は制限されている。同時配信を放送と並ぶ本来業務として位置付けるには法改正が必要となる。その覚悟が経営陣には見られない。幹部の一人は7月、「将来的には同時配信を本来業務にしたい」との考えを示した。本音だったのかもしれないが、強い批判を受け、トーンダウンした。

 なぜ同時配信が必要か。ネット受信料をどう徴収するのか。民放や動画コンテンツ製造・提供業者などと共存は可能かなど詳しい説明が聞きたい。ネット受信料の話だけが先行した形では、国民の理解は得られまい。

 そもそも、同時配信にニーズはあるのだろうか。NHKが昨年実施した試験では、同時配信を利用した人は6%にとどまった。急いで進める必要があるとは思えない。

 むしろ、NHKが抱えている課題への対応が先ではないか。籾井勝人前会長の在任中、「政権との距離」を巡って何度も物議を醸した。受信料着服をはじめ、職員の不祥事も相次ぎ、綱紀粛正が徹底されたのか、厳しい目が注がれている。

 今春公表された会計検査院の調べでは、子会社13社の利益剰余金は2015年度末で合わせて948億円に上っていた。子会社とはいえ、経営の透明性を高め、利益の一部を配当としてNHK本体に返し、受信料の値下げや質の高い番組作りで国民に還元できないか、検討するのが筋だろう。

 同時配信を認める条件として、放送事業を管轄する総務相から示された項目にも、こうした課題が指摘されている。公共放送としての役割をきちんと果たしているのか▽子会社などへの業務委託の透明性をどう高めるか、である。重い問いが投げ掛けられていることを経営陣は自覚しなければならない。

 とはいえ、NHKが質の高い番組を多く制作していることも忘れてはなるまい。先日は、本土復帰前の沖縄で核弾頭を搭載した米軍のミサイルが誤って発射され、海に突っ込んだことを暴いた。核持ち込みの実態を明らかにして現地に波紋を広げる、公共放送ならではの役割への期待は大きいだろう。

 だからこそ、NHKが目指す将来像を急いで示してほしい。同時配信も、その中でじっくり議論すべきである。





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