年金未払いがあぶり出した名ばかり改革 – 日本経済新聞

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 年金受給者に払うべき分を払っていなかった事例が多数あったと厚生労働省が明らかにした。ただでさえ国民の間に不信感が渦巻いている年金制度の土台を揺さぶる不祥事といっていいだろう。

 年金事務をつかさどる日本年金機構が未払い分を速やかに払うのは当然として、政権与党が主導して多額の未払いを生んだ真因を徹底して調べる必要がある。

 その際に大切なのは、単なる事務処理の誤りだけで済ませないことだ。総額598億円に達する未払い分のうち、260億円は年金機構と公務員などの共済組合との間で受給者情報のやり取りがずさんだったことに起因する。

 これは、2012年に成立した関連法に基づく厚生・共済年金の一元化が名ばかりである可能性を示している。一元化はもともと年金の官優遇をならすのが狙いだった。その原点に立ち返り、年金機構と共済組合の統合を含め、年金への信頼を高める制度改革に取り組む責務が政権にある。

 年金機構が払っていなかったのは、厚生年金加入者の配偶者が65歳になったときに一定の条件の下でその基礎年金に加算する分だ。対象は10万5963人。うち10万1324人は夫婦どちらかが公務員などの共済年金に入っていた。

 ほぼ10年前、年金機構の前身である社会保険庁が5000万件の年金記録の持ち主を把握していない問題が発覚した。すったもんだの末に社保庁を解体して年金機構に衣替えしたのは、この宙に浮いた記録問題が発端だった。

 今回は年金機構自らが問題点を明らかにして未払い分を払う態勢を整えた。社保庁に染みついていた無責任体質が一掃されつつあることをうかがわせる。

 だが未払い分を回復させれば済む問題でもなかろう。厚労省は未払いの理由として年金機構と共済組合との情報連携の不備、システム処理の誤りなどを挙げた。これらは双方を組織ごと一元化していれば防げた可能性がある。

 年金の官民一元化は道半ばだ。公務員などの共済組合が所管官庁の天下り先になっている実態もある。政治が主導して組織を統合し積立金運用を一体化する真の一元化に乗り出すときである。

 国会論戦に求められるのは、この類いの年金不祥事を政争の具にしない節度だ。加入者・受給者の信頼を回復させるべく、実りある議論を与野党に求めたい。





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