「フォルクスワーゲンの闇」、私はこう読む――八重樫武久 – 日経テクノロジーオンライン

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フォルクスワーゲンの闇 世界制覇の野望が招いた自動車帝国の陥穽

ジャック・ユーイング著、2017年7月27日発行、日経BP社刊

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 2015年に発覚したドイツVolkswagen(VW)社によるディーゼルエンジンの排ガス不正問題。ドイツに在住するニューヨーク・タイムズ記者のジャック・ユーイング氏による丹念な取材を通じて深層をあぶり出した著作「フォルクスワーゲンの闇 世界制覇の野望が招いた自動車帝国の陥穽」(日経BP社刊)が発売された。

 トヨタ自動車で長年クリーンエンジンの開発に携わり、初代「プリウス」に搭載するハイブリッドシステムの開発リーダーだった八重樫武久氏は、本書をどう読んだのか。八重樫氏は、ライバルとして競い合ったVW社の技術者が“独裁者”の支配に屈して不正に手を染めたことを嘆く。(日経Automotive)

 2015年9月18日――。米国環境保護庁(EPA)がVW社の大気浄化法違反について発表したことを私が知ったとき、「やはりそうだったのか」と妙に納得したことを覚えている。米国の排ガス規制は、世界で最も厳しい。VW社が競合他社に比べて簡素な排ガス対策装置で対応できていたことに、かねて疑問を抱いていたからだ。

 疑問の答えは、優れた技術にあったわけではなく、「いかさま」だった。排ガス対策装置の作動を弱める「デフィート・ソフト」を使い、公式試験のときにだけ、「ジェッタ」などに搭載する排気量2.0Lのディーゼルエンジンの排ガス成分が規制値内に収まるようにした。通常の走行時は、規制値を大幅に超える有害な排ガス物質を垂れ流す。

 本書は膨大な捜査記録や裁判資料を読み込んで得た情報に加えて関係者への広くて深い取材を基に、ニューヨーク・タイムズのベテラン記者が排ガス不正問題の深層に切り込んだ。

 とりわけ印象的だったのが、2006年11月にVW本社の最上階にある特別会議室で開かれた会議の様子だ。15人の開発関係者が参加し、ほぼ全員が違法であることを認識しながら、「どこもやっている」という企業不祥事でお決まりの言葉を吐いて“いかさまソフト”の採用を決めた。クリーンエンジンの開発に意欲を燃やす「理想主義者」の声は黙殺だ。決定を下したマネージャーは、会議の最後に「つかまるな」とのコメントまで残している。





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