貸出金残高55兆円 「危機対応」対象が拡大 – 琉球新報

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政府系金融機関と民間金融機関の貸出残高の推移

 財務省によると、日本政策金融公庫(日本公庫)、日本政策投資銀行(政投銀)、商工組合中央金庫(商工中金)、国際協力銀行(JBIC)、沖縄振興開発金融公庫の五つの政府系金融機関の貸出金残高は、2015年度末で前年度比3兆円減の約55兆円となっている。経済対策などによる危機対応の貸し出しが減少したのが主因だ。だが、商工中金で不正融資が発覚するなどそのあり方が問われる事態も起きている。

 約55兆円という貸出金残高は、一般の銀行や信用金庫などと合わせた日本全体の貸出金の約9.2%を占める。最も残高が多いのが日本公庫で18.3兆円。次いでJBICが13.6兆円、政投銀は13.1兆円で、商工中金は9・5兆円、沖縄振興開発金融公庫は0.8兆円となっている。日本公庫、JBIC、政投銀は前年度から減少、商工中金と沖縄振興開発金融公庫はほぼ横ばいで推移している。世界的な金融危機や大災害などの際に企業に低利で融資する国の制度融資「危機対応融資」は、前年度比約7400億円減の約6兆2000億円となっている。

 ◇中小企業に資金 高度成長支える

 政府系金融機関は、戦後、産業発展やインフラ整備を進めるために相次いで設立された。民間資金で設立された一般の銀行などと異なり、政府が全額か一部を出資し株式を保有している。高度成長期に資金不足に悩んでいた中小零細企業などに資金を供給し、日本の経済発展に一定の役割を果たしてきた。

 だが、資金が行き渡るようになったことに加え、民間金融機関と業務が競合するようになり、「民業圧迫」との批判が高まった。一般の銀行などの融資の原資は預金者の預けたお金だが、政府系金融機関は政府の財政投融資などが元手になっている。財投は、政府が国債の一種である財投債を発行して調達する。かつて財投債の主な買い手は国の郵便事業で、郵便貯金や簡易保険で集めた資金で購入していた。

 政府の信用力をバックに低利で調達した資金で事業を拡大していた状況に対し、「官から民へ」を訴えた小泉純一郎政権は05年、郵政改革の一環として政府系金融機関の改革に着手。政府系金融機関の機能を▽中小零細企業・個人の資金調達支援▽国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不可欠な金融▽円借款−−の三つに絞り、政府系金融機関の統合・廃止を決めた。国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、JBICの国際金融部門は統合され、08年10月に日本公庫が発足。公営企業金融公庫は廃止されて独立行政法人となった。また、政投銀、商工中金も同年に株式会社化されて将来、完全民営化する方針が決まった。8機関あった政府系金融機関は4機関に再編され、再編前に約90兆円あった貸出金残高も再編後には46兆円に半減した。

 だが、08年9月のリーマン・ショックに伴う金融危機で、政投銀や商工中金の民営化の流れにストップがかかった。中小企業の資金繰り悪化などを受け、政府・与党内で「政府が金融機能を持っていないと国民生活を守れない」との声が高まったためだ。政府は、経済危機で資金難に陥った中小企業を支援する危機対応融資制度を創設、政府系金融機関にその実施を担わせた。危機対応融資の残高は、リーマン・ショック翌年の09年度に前年度比3.8兆円増の5.3兆円に急増。その後、11年3月の東日本大震災で12年度には8兆円に達した。

 危機対応という新たな役割を担ったことで、政投銀と商工中金の完全民営化の時期は2度にわたって先送りされている。また、12年4月には、インフラ輸出強化を目的に日本公庫から国際金融部門を分離してJBICが復活。政府系金融機関は5機関に増えた。

 ◇不正招いた融資ノルマ

 危機対応融資は、12年度をピークに減少しているが、政府が経済対策を打ち出すたびに対象となる危機が増加。なかには「デフレ脱却」など本来の趣旨から外れたようなものまで対象になっている。商工中金で今年、発覚した危機対応融資の不正融資では、融資獲得がノルマとなっていたことが明らかになった。そのため、「過剰な危機対策が政府系金融機関を再び肥大化させている」(金融関係者)との指摘も出ている。【井出晋平】


(毎日新聞)





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