手術死亡問題、内部通報者への個人攻撃に転じる現状があった – ニフティニュース

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手術死亡問題、内部通報者への個人攻撃に転じる現状があった

麻酔科医・志村福子氏の告発の結果どうなったか

 この国では「内部告発」が極めて困難な現状がある。隠された事件を内側から暴露した“経験者”たちの言葉に耳を傾けると、勇気をもって声を上げた者が割を食う「内部告発後進国・ニッポン」の現実が浮かび上がってくる。

 内部から不正を正そうとする者に対して、組織が冷たい仕打ちで応じるのは、営利企業に限ったことではない。患者の命を預かる医療機関でも同様のケースがある。千葉県がんセンターに勤務していた麻酔科医・志村福子氏(45)の告発も、“封殺”の対象となった。

 * * *
 組織を信じて声を上げたのに、黙殺されたばかりか、間もなく直属の上司から嫌がらせが始まりました。

 それまでは月に10~20件は手術麻酔を担当していましたが、センター長に直訴した直後に病院の手術予定表から私の名前は一切消され、退職を余儀なくされました。

【千葉県がんセンターでは2014年、過去7年間に胃や膵臓を摘出するため腹腔鏡手術を受けた患者9人(後に11人と判明)が手術後、相次いで亡くなっていることが明らかになった。組織内で志村氏が声を上げていたのは、問題が表面化する4年も前のことだった】

 一連の手術事故は、もっと早く食い止められたはずでした。私が2007年に非常勤として勤務を始めて間もなく、異常に気が付きました。

 複数の病院で仕事をしてきた麻酔科医から見ると、手術の巧い執刀医かどうかは、すぐにわかる。センターでは、執刀医の経験に見合わない難易度の腹腔鏡手術が指導医不在のまま行なわれていた。その結果、手術にかかる時間が長く、再手術も頻発していた。

 たとえば2008年に行なわれた58歳男性の手術では、わずか1例の執刀経験しかない医師が担当し、縫合不全で翌日には再手術になった。それだけでも問題なのに、私の上司で手術管理部長の立場にあった麻酔科医は、その再手術の麻酔を研修中の歯科医師に担当させた。

 再手術の現場でも手術管理部長は、麻酔薬の投与が終わると監督役を放棄して手術室を離れてしまっていました。患者は心停止して植物状態に陥り、6か月後に亡くなった。

 これほどの事故なのにセンターでは事故調査委員会も開かれない。歯科医師単独での麻酔研修は、その後も日常的に行なわれていました。

 非常勤だった当時は憤りを胸にしまい込んでいましたが、2010年春に常勤医になって間もなく、同種の事故が再び起きました。患者の死には至らなかったものの、このままではまた死亡事故が起きるに違いない状態で、黙っていられませんでした。

 強い危機感があって上申したのに、結果は上司からの“報復”でした。結局、がんの中でも胃や大腸など消化器系は手術件数も多く、医師の発言力も強い。当時のセンター長も何もいおうとしなかった。

 また、そうした執刀医の立場からすると、再手術の多さを咎めない麻酔科医の手術管理部長は、重宝する存在だったのだと思います。

【結局、2010年9月に志村氏は退職に追い込まれ、外部への“告発”を決意する。ところが県病院局とやり取りをしても、調査が始まる気配は全くなかった。翌2011年2月には厚生労働省の公益通報窓口に実名で告発メールを送付。それでもなお、事態は動かなかったという】

 窓口から返ってきたのは〈公益通報にあてはまらない〉という返答でした。

 公益通報者保護制度(2006年4月施行)は、不正を告発した「労働者」を不当な解雇等から守る制度であり、すでに退職している私は「労働者」に当てはまらないというのです。

 その後も死亡事故は重なり、病院が謝罪して第三者委員会による調査に着手したのは、私が厚労省にメールを送った3年後。センター内部の職員から週刊誌への告発がなされてからでした。

「内部通報」は本来、組織にメリットのある仕組み。通報から解決につなげれば、バッシングに晒されることもない。でも、多くの組織ではそうは理解されず、通報者への個人攻撃に転じてしまう現状があるのです。

※週刊ポスト2017年8月4日号





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