なぜ台湾の精進料理「素食」は旨くて美しいのか? – BLOGOS

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■台南で気楽に一日ベジタリアン

台北から台湾新幹線で南へ1時間。“台湾の古都”といわれる台南の通りにはこぢんまりとした個人経営の飲食店が軒を連ねる。牛肉湯(ニウロンタン)と呼ばれる牛肉のスープ、虱目魚(サバヒー)と呼ばれる白身の魚の粥、人気のデザート、マンゴーかき氷。そんな安旨グルメにハマり、ひたすら街中の旨いものを食べ尽くさんばかりだった筆者は街中の看板に“素食”の文字が多いことに気がついた。どんな食べ物かと聞いてみると「素食と書いて、スーシーと読むの。日本で言うと肉や魚を使わない精進料理の店ってところかな?」。そんな馬鹿な。素食の看板を掲げる店はどう見ても定食屋然とした店ばかりだったのだ。

▼素食って?
素食=質素な、はたまた粗い食事、ではない。素食とは中国語で菜食の意味。日本でいうと精進料理といったところ。殺生を嫌い、菜食を好む敬虔な仏教徒が人口の約10%を占める台湾ではベジタリアンが多く、街中でも「素食」の看板を多く目にする。また素食店でなくても、素食メニューを選択することができる店も多い。卵に関しては使う店と使わない店が存在する。卵は生まれてないので殺生ではない、いや殺生だと意見が分かれるが、その辺のこだわりは薄い気がする。

昨日の夕食の肉料理とアルコールでもたれまくった胃袋。「今日はなんちゃって素食者、ベジタリアンになる!」と決心し、朝からホテルで自転車を拝借して、街中の素食店を巡ることにした。

まず、朝食は点心を食べたいと思い訪れたのは、台南駅近くの青年路(チンネンルー)にある「清祺(チンチー)素食」。店先には蒸したて、揚げたての点心がずらりと並ぶ。朝から次々にバイクが乗りつけ、左手にトレイ、右手にトングでパン屋のように点心を取って、会計に進んでいく。イートインもあり、ファストフード店といった様相だ。


常連たちに素食の意識は薄い。安くて、美味しいから通っている人が多い。全然ストイックじゃないベジライフだ。亜熱帯らしいお気楽感もこの店の魅力の一つ。点心3つと豆乳で350円くらい。

驚きなのは食べても中身を見ても肉まんとしか思えないものが素食だということ。この肉のような具材は何かと尋ねれば、日本の精進料理と同じように大豆に味をつけたものであった。

店長の邱文棋(チョウウンチー)さんによると、店の隣に寺院があるので、精進落としの客を当て込んで素食の店を開いたけれど、今では健康にいいと聞きつけた女性の客が多いという。「すべて手づくりで健康にも良くて、殺生もしていない。最高でしょ?」。その言葉には強い説得力があった。

ランチは麺が食べたいと訪ねた成功路(チェンゴンルー)にある「佛世縁(フォーシーイェン)素食」へ。ここの名物は辣味(ラーウェ)麺。見た目は肉入り細うどんといった感じだ。肉のだしがしっかり効いていておいしいラーメンと感じたのだが、やはりこの肉も大豆でつくられていて、だしは野菜でとっていた。味覚って見た目に左右されるものだなあ。


(左)テイクアウトの弁当。ハムに見えるのも大豆製。こちらは240円くらい。(右)辣味麺。肉に見えるのは大豆ミート、だしは野菜というが、醤油ラーメンくらいの濃さと考えて。280円くらい。

この店では弁当や惣菜のテイクアウトも可能で、時間がなくてベジライフに挫けそうな気持ちを支えてくれる。「素食は消化も良くて体にも負担が少ないの」と語る店長の曽秀金(ツェンショーチン)さんは御歳58歳。その肌艶に御利益の一端が窺えた。

一日ベジタリアンではあるが、旅行気分は譲れない。夕飯は豪華に中華のはしごをしよう。台南市の永華路(ヨンファールー)にある「寛心園(クアンシンイェン)」は健康・美容効果にこだわった素食中華料理店だ。野菜と果物は無農薬で、コースでは50種類の野菜を食べることができるという触れ込みなのだが、そのコースは見た目も華やか。メインディッシュの白トリュフの炒飯には、素食の枠を超えた感動で胃袋が躍った。

「“素食で豪華”を目指しました」とは店主の張志遠(チョウシイェン)さん。今では台湾に13店舗もあるこの店からは、進化する素食が台湾、いや世界に広がっていく可能性を感じることができた。

「寛心園」と同じ永華路にある「滴水坊(ティースイフェン)」は、寺院内にある素食の店だ。僧侶が経営するこの店でも、日本の精進料理のようなイメージはまったく感じない。点心、麺、炒飯、あと酒が進みそうなつまみまで揃い、しかもかなり安い。


(左/寛心園)前菜、サラダ、薬膳スープ、白トリュフ炒飯、デザート。すべて無農薬の米、野菜、果物を使用。2200円くらい。(右/滴水坊)奥から時計回りに、小籠包240円ほど、湯麺400円ほど、素餐蹄筋200円ほど、如意ソーパ200円ほど、花生豆腐200円ほど、黄金炒飯400円ほど。

煩悩の赴くままに食べてしまった後、尼僧の釋妙勤(スーミャウチン)さんにお話を伺う。

「おいしい素食を提供することで殺生が減るでしょ? 仏教を布教する上でもこの考え方は大切なんです」

その穏やかな視線には一点の曇りもない。安い、旨いを追い求めてきた己の自堕落な生活を悔い改めて、一日は清らかに締め括られたのでした。

翌朝。あんなに好き勝手に食べたのに胃が軽い。素食は美味しくて、ボリュームもあって、どうやら胃にも御利益があるようだ。

(文・飯塚天心 撮影・蔡 宗昇)





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