津田大介「政治利用されるフェイクニュース禁止法」 – AERA dot.

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津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

マレーシア総選挙で勝利し首相に返り咲いたマハティール氏

マレーシア総選挙で勝利し首相に返り咲いたマハティール氏

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。今回はマレーシアで施行されたフェイクニュース禁止法の問題点を指摘する。

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*  *  *
 5月9日に行われたマレーシア総選挙では、事前予想を覆し、マハティール元首相率いる野党連合・希望連盟が、ナジブ首相率いる与党連合・国民戦線に勝利、1957年の独立以来初めてとなる政権交代を実現した。

 ナジブ政権の汚職疑惑や物価上昇など、与党連合への不満が高まるなか、「腐敗」政権の打倒を訴える野党連合に支持が集まったというのが今回の構図だ。与党も自らが有利になるように選挙区割りを変更(ゲリマンダー)し、投票日を平日に設定するなど、なりふり構わない戦略で野党の追い落としを図っていた。4月11日に施行されたフェイクニュース禁止法も、野党からの批判を封じる党利党略から制定されたという見方が強い。

 法案提出からわずか1週間で成立した同法は、悪意を持ってフェイクニュースを発信または拡散した者に、6年以下の禁錮刑、50万リンギ(約1400万円)以下の罰金を科している。

 しかし、「悪意」の定義があいまいで、恣意(しい)的な運用が可能なことから、政権批判を抑え込む言論統制だとして国内外から批判が相次いでいた。

 4月23日には、同法に基づく初の摘発が行われた。旅行中のデンマーク人男性がユーチューブに投稿した警察の対応を批判する動画が「悪意のあるフェイクニュース」だとして逮捕起訴された。4月30日に禁錮1週間、罰金1万リンギ(約28万円)の有罪判決が下された。男性は殺人事件の通報から警察の到着までに50分もかかったと主張していたが、警察側は8分で到着したと反論。男性は裁判で「怒りに任せて投稿してしまった」と非を認め、謝罪した。

 最初の摘発事例こそ政治的ではなかったものの、選挙戦の最中には、野党連合のリーダーたちを狙い撃ちにした捜査が次々と開始された。警察は5月2日、フェイクニュース禁止法違反容疑でマハティール氏に対する捜査を開始したと発表。マハティール氏は立候補届け出のためにチャーターした飛行機が故障のためにフライトできず、さらに別の飛行機を手配できなくするよう圧力がかけられていたとして、政権側による選挙妨害だと批判していた。

 マレーシア最大与党「統一マレー国民組織(UMNO)」はこの主張が「公共の安全に対する国民の不安を招く」ものだとして被害届を提出し、捜査が開始されたという。マレーシア民間航空局は「妨害の証拠は発見されなかった」との声明を出しているが、マハティール氏は「真実だ」と反論している。

 その3日後の5月5日には、野党「人民正義党」のラフィジ副党首に対する捜査開始が明らかにされた。国営ベルナマ通信によると、ラフィジ氏は野党候補者の立候補届け出を警察と選挙管理委員会が妨害したとソーシャルメディアに書き込んでいたということだが、このこと自体野党への牽制(けんせい)と見る向きもある。

 まだまだ予断を許さないマレーシア情勢。政権が変わったことで、フェイクニュース禁止法がどのように運用されるのか注目したい。

週刊朝日 2018年5月25日号

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津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

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