都市スポンジ化 空き地・空き家がランダムに発生 – 毎日新聞

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国交省「土地情報システム」個人情報流出問題 コメントはまだありません



所有と利用を分離 国交省

 人口減少と高齢化に伴い都市部でも空き地や空き家がランダムに発生する「都市のスポンジ化」に、多くの自治体が危機感を募らせている。国土交通省は、必要な都市機能を誘導・集約するコンパクトなまちづくりの推進の障害になっているとみている。このため同省は、土地の「所有と利用の分離」を打ち出し、複数の低未利用地の利用権を設定できる制度を創設して、市町村の取り組みを支援する総合的な対策に乗り出す。

 国交省の土地基本調査などによると、全国の個人所有の宅地のうち、空き地や原野になっているのは2013年には981平方キロあった。これは大阪府の面積の約半分、03年に比べ44%、300平方キロ増えた。また、13年の賃貸や売却用などではない空き家は10年前に比べ約50%、106万戸増の318万戸とほぼ愛知県全域の世帯数と同じになった。

 バブル期には地価高騰が続く中で、開発が郊外や山間部周辺にまで及び、住宅をはじめ商業・サービス施設、公共施設などの都市機能が広がった。しかし、その後、一部の都市を除いて人口減少が進み、各地で空き地、空き家が多く発生し、郊外の住宅地では売却も賃貸もできずに保有コストのみがかかる“負動産”も増えた。また、市町村の合併などによって公共施設の統廃合が進み遊休施設も目立ってきた。

 目立つ駅周辺、中心部の“過疎化”

 地方都市の中心部では、かつての開発が駅周辺などの中心部から進み、郊外へと広がった経緯から、まちの老朽化も同じ順序で進み、駅に近いほど戸建て住宅の空き家率が高いという傾向もみられるという。中心商業地では商店主の高齢化や後継者難で店を閉めるなどして「シャッター通り」といわれる現象が起きたり、老朽化などで解体してもかつて建物があった場所の有効的な利用がなく、暫定的に使っている駐車場が街並みを分断して商業地としての活力を失う要因にもなっているという指摘もある。

 このため、都市自体は面的に広がったままで変わらないのに低密度化し、商店や病院やサービス施設などが成り立たなくなった。公共交通機関も撤退したり、運行数を減らすなどしたため住民の生活利便性が低下し、行政サービス、インフラの維持管理、施設の非効率化も叫ばれている。さらに、空き地へのごみの不法投棄などによる環境、景観の悪化や治安面での不安、災害の危険性などもあり、ますます住民が離れていく。

 都市の内部で空き地、空き家などの未利用地が小さな単位でランダムに相当量発生した地区を上から見ると、小さな穴が数多く開いたように見えることから「都市のスポンジ化」と呼ばれるようになった。

コンパクト・プラス・ネットワーク計画推進

 国交省はこの現象に歯止めをかけ、悪循環を断ち切ろうと14年に都市再生特別措置法と公共交通活性化再生法を一部改正して、居住機能や医療・福祉・商業などの都市機能の拠点地区への誘導と、持続可能な地域公共交通のネットワークを形成するコンパクトなまちづくりを目指してコンパクト・プラス・ネットワーク計画制度を創設し、市町村への支援を始めた。

 この制度では、市町村が市街化区域の中に必要な生活サービス施設と、誘導・集約する「都市機能誘導区域」と住居を誘導する「居住誘導区域」を設定してまちづくりを進める「立地適正化計画」を作成することから始まる。国は計画作成費用や誘導施設が区域内に移転する際に移転前場所の跡地の整備費用などを補助する。また、医療、社会福祉、教育文化、子育て施設などの区域内への誘導に対しての整備補助や出資、税制面での優遇措置もある。さらに都市計画で設定したエリア内での誘導施設の建て替えに容積率緩和の特例も適用される。

 計画作成にあたっては国交省が現地に行って直接アドバイスや指導もしており、17年末時点で札幌市、山形県鶴岡市、長野市、福岡県飯塚市など70都市が都市機能誘導と居住誘導の両区域を、水戸市、福井市など46都市が都市機能誘導区域のみを設定して作成・公表しており、実施に向けて進んでいる。また、甲府市、静岡県沼津市など268都市が計画の作成作業を進めており、計384都市が計画の取り組みを行っている。国交省は当初、20年までに150都市が計画作成することを目標にしていたが、対策を進めたい都市が多く、意欲的なところから昨年末に目標を300都市に引き上げた、という。

 国交省はコンパクト・プラス・ネットワーク計画をさらに円滑に進めていくために昨年2月には社会資本整備審議会の小委員会で、ネックになっている「都市のスポンジ化」への対応をテーマにあげて議論した。8月に出された中間まとめでは、すでに起きているスポンジ化への対処だけでなく、まだ顕在化していない地域での予防的な措置を合わせて都市計画上の課題として対策を講じる必要があると指摘。都市計画を、開発をコントロールするだけでなく、都市を管理(マネジメント)することにまで広げる制度改正などを提言した。

 具体的にはスポンジ化が起きている地区では、穴を埋める地域再生につながる事業に行政が金融支援や広報で後押ししていくほか、土地所有者が周辺の土地と統合などをして集積を図り活用したい人に引き渡したことや、行政がそのマッチングの働きかけなどを行う機能を発揮、サービス施設が休廃止する場合などには行政が事前に把握して利用調整を行うことができる仕組みの検討などを求めた。

 予防策としては、土地利用に関するルールを官民で設定し管理していくことや、地域住民、民間団体などによる計画の実現に向けた活動を積極的に認定・支援する仕組みを検討することなど、まちづくりを主体的に担うコミュニティー活動を推進する仕組みづくりを求めた。

 ただ、実際には空き家や空き地の多くは所有者や住人が死亡したり入院、転居などによって発生しており、相続人も既に別の住宅を所有しているため利用されず、家屋が老朽化や新たな需要もなく不動産価値が下がって売却もできないといった事情がある。また、所有者が当面困っていないために何とかしようという意欲もなく、そのまま放置されるケースも多く、なかなか利用が進んでいかないのが現状だ。

長野市の「ぱてぃお大門 蔵楽庭」=2012年9月、まちづくり長野提供

都市再生特措法改正で市町村が利用権設定計画

 国交省はこのままでは、開発意欲がますます下がり望ましい土地利用がなされないとして、都市再生特措法改正案を今の通常国会に提出し、自治体を支援するなどしてスポンジ化対策を進めていくことにした。

 改正は(1)コーディネート・土地の集約(2)身の回りの公共空間の創出(3)都市機能のマネジメント--の3本柱。(1)では、土地の「所有と利用の分離」を打ち出し、低未利用地の所有者とその土地を計画に沿った利用をしたい希望者を行政側がコーディネートして、所有権に関わらず複数の土地や建物に一括して利用権を設定する計画を市町村が作成する「低未利用土地権利設定等促進計画」制度を創設する。空き地の所有者がわからない場合は空き家対策特別措置法と同様に市町村の固定資産税課税情報を使って調べることもできるようになる。

 また、まちづくりを進める団体など「都市再生推進法人」の業務に低未利用地の一時保有などを追加して不動産取得税などを軽減するほか、土地区画整理事業を進めるにあたって低未利用地を集約して商業施設や医療施設などの敷地を確保する場合には、国の「都市開発資金」の無利子貸し付けの利用が可能になる。さらに市町村が低未利用土地利用などの指針を作成し、地権者に管理についての勧告ができるようする。

 (2)では地域コミュニティーやまちづくり団体が空き地や空き家を活用して交流広場、コミュニティー施設などを共同で整備・管理する「立地誘導促進施設協定制度」の創設や、住民団体などをまちづくりの担い手として公的に位置づけて官民連携して都市計画の案を作成できるようにする「都市計画協力団体制度」も創設する。

 さらに(3)では民間が進める開発地区内でのアクセス道路など民間が整備すべき施設について行政側と民間事業者が協定を結んで確実に実行させる制度や、立地適正化計画の都市機能誘導区域内の商業施設や病院などの医療施設などが休廃止する場合には、少なくとも30日前に市町村に届け出る制度を創設し、市町村長が施設に対して要望を出すなど対策の準備ができるようにする。

 国交省はこれらの施策によって計画を作成した市町村のうち今後10年間に居住誘導区域の低未利用地が現状維持か減るところが7割以上になることを目標にしているという。

 すでにスポンジ化の対策を先駆的に進めている市町村の中で、国交省は鶴岡市や福井市、長野市での取り組みなどをモデルケースとしてあげている。

山形県鶴岡市のランド・バンクが空き地と空き家を一体整備して新築した同市神明町の住宅=2017年5月、鶴岡市提供

「ランド・バンク」を設立 鶴岡市

 05年に1市4町1村が合併した鶴岡市は、15年の人口は13万2000人と10年間で約1万1000人減り、中心市街地の地価は20年間で半減したという。市街地の住宅区域は、江戸末期までに形成された伝統的な中心住宅地、それを取り巻くように高度成長期に開発された新興住宅地、さらにその外側にバブル期以降に開発された新住宅地の大きく三つに分かれており、中心に近い地区ほど高齢化率も高い。中心部には主な都市機能は集積しているものの城下町だったため宅地も道路も狭く車社会に対応できず、若年層を中心に周辺部に流出して空き地、空き家が増加していた。

 こうした問題を解決するため民間業者と地域住民、鶴岡市が連携して、11年に「鶴岡市ランド・バンク研究会」を立ち上げ、12年に「NPO法人つるおかランド・バンク」を設立して行政や民間業者単独では解決が難しい空き家・空き地対策などに取り組んだ。中心部に位置する大東町地区では7区画のうち5区画が空き家、空き地だった住宅地を所有者の寄付を受けるなどして6区画に集約した。周辺道路を拡張するとともにクランク状になっていた地区内の私道を一直線に変えるなどして駐車場付きの住宅を新築し若い世帯にあっせんした。

 また、新明町地区では空き地と老朽化した空き家があった狭い2区画を同バンクが一体開発に取り組み、空き家を解体して一つの敷地にして新築住宅を建てた。幅3.4メートルと狭かった前面道路を敷地の寄付により1.3メートルセットバックして約5メートルに広げた。新築住宅には若い子育て世帯が購入、入居している。

 さらに、中心部では蔵などを生かし、中庭広場を配する住宅街区に再編。まちづくり会社が倉庫跡を映画館にリノベーションするなどした。同市は同バンクの活動も取り入れて17年4月に旧鶴岡市の市街地に居住誘導区域と都市誘導区域を設定した立地適正化計画を作成、公表してまちづくりを進めている。

 福井市では中心市街地の新栄商店街にあった空き店舗や空き地、民間駐車場などがあった一画のうち、駐車場と駅近くの市営駐輪場の利用権を交換。14年に市と福井大が駐車場を期間限定のウッドデッキのイベント広場にし、空き店舗も活用して「新栄テラス」の実証実験を行い、好評を博した。

 同年には同商店街は全体の半数近い30店が空き店舗だったが、同テラスのにぎわいに引かれるように15年には周辺商店街とともにエステや美容院などが空き店舗に入居。「美のまちふくいプロジェクト」として「美容」にまつわる店を前面に押し出して再生に取り組んだ。16年にはJR福井駅西口の再開発が完了したこともありにぎわいを取り戻し、空き店舗は半数に減った。同テラスは常設にし、現在商店街振興組合が引き継いで運営している。

「まちづくり長野」が空き店舗再生

 長野市では善光寺の参道に面した一画「ぱてぃお大門 蔵楽庭」の取り組みが注目されている。同地区では土蔵づくりや大正時代の洋風建築も並んでいたが、14棟あった店舗が次々廃業し、営業していたのは2店舗だけで、残りは持ち主がそのまま放置し朽ちた空き店舗が並んでいた。01年には空き店舗が売りに出されるという情報を街の景観などを研究していた住民有志の組織がキャッチし、大きな建物が建たないようにと、資金を出し合って取得した。

 03年に長野商工会議所を中心に、長野市、商店街、地元企業などが出資してまちづくり会社、「まちづくり長野」を設立して、廃屋のようになっていた古い空き店舗をそのまま使って、しっくい壁や瓦を生かすリノベーションに取り組んだ。05年には中庭や趣ある土蔵を配置した一画が完成し、飲食店や物販店など15店がオープンした。現在は「まちづくり長野」が一体管理し、観光客らの人気スポットにもなっている。

 一方、13年の調査で空き家率が20.8%と全国平均の13.5%を大きく上回り、県庁所在地では最も高かった甲府市はスポンジ化に危機感を持ち、立地適正化計画の作成作業を進めている。同市では開発が制限される市街地調整区域にまで住宅が広がっており、若い人たちが多く住んでいる。これをどう誘導して集約するかといった課題がある。また、JR甲府駅の約8キロ南の市街化調整区域の農地にリニア中央新幹線の新駅も予定されており、今後市街地との交通ネットワークも含め、集約と連携をどうするか山梨県などと相談し、19年度中には策定して、スポンジ化対策を進めていきたいという。


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