
スマートスピーカーなどでも注目される「音声」のイノベーションが物流業界の救世主となるか
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人手不足がもたらす負のスパイラル
自前の倉庫を持つ製造業や卸売業、小売業などの企業にとって、物流効率化は大きな課題だ。たとえば、一般的な消費財を扱う卸売業の物流業務のフローは以下のとおりとなる。
・顧客企業から注文が入る
↓
・倉庫で該当商品をピッキングする
↓
・箱詰めして出荷準備し、運送会社に荷物を預ける
↓
・運送会社が顧客先まで荷物を配送する
ヤマト運輸や佐川急便に代表される運送会社は今、人材不足やドライバーの長時間労働是正などを背景に、運賃の値上げや集荷時間の短縮を検討・実施している。その場合、たとえば19時までだった集荷時間が17時に繰り上がると、それに対応するためにはメーカーや卸(おろし)の倉庫で働く人員を増やすなど、なんらかの対策をとらなければならない。
しかし、メーカーや卸側でも慢性的な倉庫内作業員の不足に陥っているのが現状だ。これまでと同じ時給でアルバイトを雇おうとしても、思うように人材は確保できない。かといって今のご時世、現有人員の長時間労働で対応することも難しいはずだ。つまり、物流業界では、今ある人員、施設、設備を有効活用しながら、生産性を向上させることが求められているのだ。
すでに努力し尽くした「効率化」、これ以上何をすればよいのか
とはいえ物流業界における効率化は、昨日今日のものではなく「終わりのないテーマ」でもある。効率化のために業務フロー全体を見直すことは有効だが、そもそも物流の効率化は、“乾いた雑巾を絞る”といわれるほど、各企業が努力し尽くしている場合が多い。
それにもかかわらず、企業規模の大小、扱う品目の多寡によらず、企業にとって物流改善は「これがゴール」というものがない。さらに、経営層からも、業績不振の際には物流コスト削減が真っ先に槍玉にあげられるという過酷な状況にある。
つまり、すでに多くの企業が物流現場の生産性向上に取り組んでおり、業務フロー全体を見直して改善を進めていくアプローチは出尽くしているのだ。そこで今、有効なアプローチは、部分最適を積み重ねていくことで、ボトルネックを解消し、全体最適につなげていく方法である。
また、投資の考え方も「スモールスタート」が有効だ。多くの中堅中小企業にとって、最新の設備に大規模な投資をすることは難しい。また、大規模企業であっても、設備や機器に大規模な投資をすること自体にもリスクがある。倉庫の移転や統廃合など、経営環境の変化に柔軟に対応することが難しくなるからだ。
そこで今、「少ない投資で」「今の運用を変えずに」「スピーディに導入が可能」として、にわかに注目を集めているのが”音声”のソリューションだ。DMM.comなどの倉庫にも導入され、実際に大きなコスト削減を実現しているというが、それはなぜか。
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・“音声指示”で紙を見る時間がゼロに
・ピッキング作業30%短縮、人件費に換算して大きなコスト削減効果
・DMM.com Baseでは作業ミスを「根絶」