【TOBマーケットレビュー】調整局面でTOBが仕掛けられる可能性は? – M&A Online

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新進気鋭のアナリスト巽 震二が送るTOBマーケットレビュー 。今回は、創薬系バイオベンチャーのリボミック<4591>、IoT製品の製品開発を行うアプリックス<3727>の2銘柄に注目だ。

米国株価が急落、日本の株価も調整局面入りでTOBが仕掛けられる可能性は?

 米国長期金利の上昇傾向が鮮明となり、2018年2月に入るとそれを嫌気して米国株価が急落し、調整局面入りを示唆する株価推移となったことから、日本の株価も連動して調整局面入りを思わせる推移を見せています。2月9日終値では、日経平均株価は1月23日のピーク24,124.15円から2,741.53円(約11%)下落し、21,382.62円となっており、またマザーズ指数は1月24日のピーク1,355.55ポイントから1,191.73ポイントまで163.82ポイント(約12%)下落しています。

 今後の株価動向はFRBのパウエル新議長の金利政策次第という見方が多いようで、今のところ利上げのスピード調整があるにせよ、利上げ方針は揺るぎそうもないという予測がコンセンサスのようで、であるとすればスピードの問題で株価調整局面は当面持続することになるというのがメインシナリオとなると考えられます。

 そのような株価下落局面においては、「落ちるナイフ」銘柄へのTOBは手控えられるでしょうが、逆に「落ち切ったナイフ」といえる銘柄にはTOBが仕掛けられる可能性があると考えられます。

株価下落局面におけるTOBシナリオは「すでに落ち切ったナイフ」に注目

 そこで、「落ち切ったナイフ」銘柄として、マザーズ上場240銘柄を対象に、公募価格(株式分割調整後)と2月9日の株価を比較し、現在の株価が30%以下の銘柄をスクリーニングしました。30%の根拠は、新規上場時の公募価格を100とした時、通常は上場以前からの株主の取得原価は、特に創業者の場合、無視できるほど小さいのが通常ですので、公募価格=売却益と考えると、株式譲渡益の所得税約20%を控除して手取りは80です。ここで、現在株価が30であれば、プレミアムを30%つけて買収しても必要資金は39となり、売り出し時の手取りの半分以上を温存しながら売り出しで手放した株式を買い戻すことが可能だからです。

 スクリーニングの結果、条件を満たしたのは以下の6銘柄でした。

〇直近株価公募価格比30%未満のマザーズ上場銘柄(単位:円/株)

証券コード 銘柄名 業種 上場日 公募価格(株式分割調整後) 株価(2018/2/9) 公募価格比
<2586> フルッタフルッタ 食品 2014/12/17 4,290 645 15%
<4591> リボミック 医薬 2014/09/25 2,300 631 27%
<3685> みんなのウェディング サービス 2014/03/25 2,800 682 24%
<3782> ディー・ディー・エス IT 2005/11/28 2,000 542 27%
<3727> アプリックス IT 2003/12/17 4,500 415 9%
<2342> トランスジェニック 医薬 2002/12/10 1,800 515 29%

(筆者作成) 

 次に、この6銘柄について、直近1年半の株価推移を見てみたいと思います。

 TOBの際は、評価基準日から6か月、3か月、1か月、評価基準日当日の平均株価を算定し、プレミアムの基礎とする株価とすることが通常ですので、6か月以上株価の低迷が持続していれば、十分に「落ち切ったナイフ」であるといえるでしょう。

〇直近1年半の各銘柄株価推移(公募価格=100として指数化)

直近1年半の各銘柄株価推移(公募価格=100として指数化)
筆者作成

〇上場時公募価格を100とした直近1年~1か月の平均株価推移

上場時公募価格を100とした直近1年~1か月の平均株価推移
筆者作成

 いずれの銘柄も、十分な期間株価が低迷しており、「落ち切ったナイフ」としてよいと考えられます。

 最後に、上記6銘柄について、バリュエーション状況と近時の株主構成、エクイティファイナンス経緯などを個別にみて、TOB対象となりうるかどうかを考えたいと思います。

 まずは直近BPS、会社予想EPSからPBR,PERの状況を概観したいと思います。

〇バリュエーション状況

バリュエーション状況
筆者作成

 バリュエーション面からは、6銘柄中4銘柄は赤字企業で、黒字銘柄の2つもPERは非常に高い状況です。PBRでも、やはり業績不振企業にありがちな高PBRで、ある程度まともなPBRとみられなくもないのはリボミック、みんなのウェディング、トランスジェニックの3銘柄でしょう。

 次に、最近の各社のエクイティファイナンスを確認しています。

 フルッタフルッタは、2017年11月13日に大株主のアスラポートダイニング<3069>第三者割当増資を行い、アスラポートダイニングの持ち株比率は11.9%から17.1%に増加しました。この経緯からは、将来的にはアスラポートダイニングによる子会社化もなくはないとは考えられますが、現状では株価の約35%相当の赤字予想となっており、ある程度業績の立て直しに見通しがつかないと上場企業としては買い増しに動きづらいかと思われます。

 リボミックは、2017年6月8日に大和証券に対して発行済み株式の0.15%相当の行使価格修正条項付き新株予約権を割り当てていますが、比率から見てこのエクイティファイナンスにはあまり重要性がないと評価できるでしょう。他方、リボミックの筆頭株主は30.1%を保有する大塚ホールディングス<4578>です。大塚ホールディングスは上場前からのリボミックの大株主で、上場時にも売り出しをしておらず、事業に対するコミットメントが一定の強度でうかがえます。会社予想赤字額は株価の10.3%相当とかなり大幅ですが、事業の立て直しのために大塚ホールディングスが子会社化に動く可能性は低くはないかと思います。

 みんなのウエディングは、2017年7月3日に著名経営者の穐田誉輝氏が自らTOBを仕掛けて59.3%を獲得したばかりですので、当面大きな資本取引はないものと考えるのが妥当と思われます。

 ディー・ディー・エスは、株主が分散化されており大株主と呼べる存在がありません。他方、創業者は社長を続けており、株式の買戻しのインセンティブは一定程度あるのではないかと推測できるかと思います。しかし、EPSは赤字見込みで、リボミックにおける大塚ホールディングスのような庇護者も見受けられない状況ですので、買収となるとなかなか難しいのではないかと考えられます。    

 アプリックスは、親子・持分布関係はないものの業務提携を行うなど、光通信<9435>との関係が深い会社です。光通信はM&Aに積極的な会社ですので、光通信によるTOBも、可能性は低くはないのではないかと思います。

 トランスジェニックも、大株主と認められるほどの株主が存在しませんが、現在の社長は創業者ではなく、買戻しのインセンティブはありません。

 以上に鑑み、TOBが発生する可能性が高いとすれば、リボミックとアプリックスの2社であろうと思料致します。 

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