マスコミが報じない「官僚リーク」 江田議員の批判が映す実態 – livedoor

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らしくないツイート

江田憲司衆院議員のツイートが話題になっているのをご存じだろうか。一連の森友騒動について、NHKが報じたニュースを「大阪地検の女性特捜部長のリーク」と断じて、これに言及したものだ。

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これに対して、「江田氏はなんだか嬉しそうだが、これは国家公務員の守秘義務違反ではないのか。(もし本当に大阪地検から報道機関へのリークがあったとして)それを放置するのは国会議員としてどうなのか」という批判が多数寄せられた。

これを受けて、江田氏は二日後、次のように釈明した。

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江田氏は筆者と同じ元官僚である。筆者も官僚がしばしばリークするのをよく知っているので、正直いって、NHKニュースを聞いた時には、「ああ、特捜部のリークだろうな」と似たような感想をもった。筆者のツイートは次の通りだ。http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/982037752970555392

<江田憲司さんのリーク元発言。そんなのみんな知っているでしょ笑。厳密には国家公務員の守秘義務違反だが、官僚のリーク、悪口、サボタージュは常套手段。官僚のリークなしになったらマスコミは成立しないからマスコミはリークを叩かない。野党は特定秘密保護法にも反対で(本音は)リーク大歓迎でしょ>

もっとも、筆者はそう思っても断定はしない。江田氏も日頃から、元官僚なら断定せずに後で言い訳の余地を残すべき、といっているはずだが、あのツイートは氏らしくない断定口調だったので、ちょっと驚いた。

いずれにせよ、地検に限らず、官僚からのリークは常態化しているといってもいい。もし官僚や部内者からのリークがなければ、スクープといわれるマスコミ報道の多くのは成り立たないだろう。

試しに、マスコミの記者に「これまでのスクープを何本書いたのか、そのうち端緒のうち官僚や企業の内部者からのリークではなく、自分の調査によるものがあるのか」を聞いてみればいい。ほとんどない、という答えが返ってくるだろう。多くのスクープは、官僚または企業の内部者からのリークによるもの、というのが実態だろう。

公益通報者保護法とはなにか

官僚でなく企業の部内者からのリークはまだいい。公益通報者保護法があるからだ。

公益通報者保護法(2004年(平成16年)制定)は、企業における内部告発を保護する制度法律だ。従業員による内部告発は、不祥事を明らかにすることで企業のコンプライアンス(法令遵守)を高め、ひいては消費者や社会全体の利益につながるというメリットがある。そのため、内部告発者を保護するための法律があるわけだ。

具体的には、(1)通報対象事実が発生し、または発生しようとしていることを、 (2)従業員が、不正の目的でなく通報した(公益通報を行った)場合、その公益通報を行ったことを理由に解雇その他の不利益取扱い(懲戒処分、降格、減給など)をすることを禁止している。

この通報先としてはマスコミもあるので、マスコミが、企業の内部者からのリークを受けることは、公益通報者保護を担うという社会的使命ともいえる。

さらに、官僚からのリークであっても、レアケース(その理由は後述)であるが、公益通報者保護制度の対象になるものであればまだいい(なお、公務員も公益通報者保護制度の対象者となっている)。

ここで、公務員の守秘義務について述べよう。

行政は国民に公開で行われることが原則だが、目的を達成するためには、一定の秘密を厳正に守らなければならない場合もある。そこで、国家公務員法では「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と定めている。

ここでのポイントは「職務上知ることのできた秘密」である。これは職員が職務に関連して知り得た全ての秘密とされている。たとえば税務署の職員が税務調査によって偶然知り得た納税者の家庭的事情などはその典型で、もちろんこれは漏らしてはならない。

守秘義務については、その性質上、退職後も課せられ、秘密を漏洩(ろうえい)した場合は刑事罰(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の対象である。

ここで、守秘義務と公益通報制度の関係について述べておこう。公益通報の対象となる「通報対象事実」とは、同法に列挙されている法規制の犯罪行為の事実等を指すので、一般的には、公益通報により、守秘義務違反に問われることはない。

もっとも、もしも官公庁で行われていることが犯罪行為にあたるのであれば、そもそも公務員には告発義務が定められているので、マスコミへのリークが許される公益通報者保護制度の対象になるのは、レアケースになるだろう。

リーク、悪口、サボタージュ

さて、官僚からマスコミへのリークは、公表すべきものを少し前倒しして、特定の者に伝えるなどはほとんど問題がないといえる。

逆にいえば、そうした場合以外のリークのほとんどに問題があるわけだが、筆者の役人時代の経験からいえば、マスコミのスクープは、一般的な官僚からのリークによるものが多いように感じられる。その手のマスコミへのリークには、やはり問題があると言わざるを得ない。

官僚は、基本的には記者クラブに属していない人には形式的対応を行うのみで、情報をださない。逆に、官僚と共犯関係にあるといってもいい記者クラブの記者には情報を出す。この共犯関係が行き過ぎれば、「違法」にあたるリークもするというのが実態である。

記者クラブ以外の者が情報を取ろうとしてもいかに難しいかは、「『佐川氏の日程は1日で廃棄』情報公開請求でわかった衝撃の実態 」( http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55100 )を見ればいい(ただし、この原稿で触れられている首相動静については、首相番記者が付加価値を付けた記事であり、公表スケジュールと違うのは当然である)。

マスコミへのリークは、官僚の政治家に対する嫌がらせの一つだが、他にも、政治家の悪口を周囲に言いふらしたり、あるいは最終的にはサボタージュという戦法もとってくる。渡辺喜美・元行革担当大臣は、「リーク、悪口、サボタージュ」は官僚の常套手段と喝破していた。

では、なぜ官僚がリークを行うとかといえば、そのほうが情報戦を有利に運べるからだ。これは、捜査当局としても例外ではない。マスコミへのリークを通じて、世論を味方につけられるというわけだ。

捜査中の事案について、「捜査の中で、対象者がこんなに悪いことをやっていることが分かった」と報じられれば、世論は「捜査関係者はもっと頑張れ!」となるだろう。そうすると、捜査がやりやすくなる。いわゆる「国策捜査」は、その手法が活用されるものとして知られている。

もうバレている

一方、前述のとおりマスコミは、官僚からのリークなしではほとんどの記事が書けなくなるだろう。この点、いくら官僚からのリークが違法なものであっても、マスコミがそれを批判することはない。

特に、事件に関する捜査情報は、捜査当局からのリークなしでは書きようがない。例えば、「参考人の事情聴取」と「重要参考人の取り調べ」は、マスコミでは完全に区別されている。後者は、これから逮捕される場合に用いられるが、これは捜査当局からのリークなしでは書けない情報である。

なお、官僚も自らが率先してマスコミにリークするのは不味い、とは思っているので、与党政治家を隠れ蓑にして、情報を流すことも多い。政治家としても、記者から「情報通ですね」と言われるのはプラスであるから、官僚からの情報を喜んで受け取ることが少なくない。このため、官僚から政治家に情報を与えれば、拡声器のように拡大してくれる。

筆者も役人時代、ある情報について、政治家へのレクチャーをすればそれは「公表済み」(マスコミや外に漏れること)と同じことだ、みなしたこともあった。こ政治家へのレクは官僚としての責務であるから、別にリークはしていないという口実にもなるので、好都合である。

官僚から政治家へ情報が流れると、その政治家がマスコミにリークする。そのリークは、マスコミ各社内でメモ化・情報共有され、各社幹部が早耳情報として吹聴して、各社のニュースになることも珍しくない。

こうして官僚から、いろいろなルートで情報が撒かれて、それが結局マスコミのニュースになっていることは、もう一般の人にもバレつつあると思う。マスコミと官僚が共犯関係にあることも、ほとんどの人がお見通しだろう。結局、マスコミには調査能力はなく、官僚からのリークに頼っているのが実情だ、ということもバレているはずだ。

こうした観点から江田氏のツイートをみると、江田氏は官僚時には記者たちの「ネタ元」になっていたはずである。さらに、政治家になってからは各種情報に精通していることで知られていた。そんな氏が、なぜツイッターで「記者のネタ元」について明かすようなつぶやきをしたのか。さすがにやり過ぎではないかと、ある意味で驚きがあった。

いずれにせよ江田氏への批判は、マスコミにリークする官僚のおかしさと、官僚のリークばかりに頼っているマスコミへの、一般の人からの素直な反応、とみるべきだろう。

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