働き方の論戦 一括審議に無理がある – 信濃毎日新聞

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 今国会に政府が提出予定の働き方改革関連法案を巡り、国会論戦が始まった。

 残業時間規制などの規制強化と、一部専門職を労働時間規制の対象外とする「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」導入などの規制緩和が柱だ。2月下旬ごろ提出することになっている。

 残業時間規制は待ったなしの状況だ。広告大手電通で女性新入社員が過労自殺して問題となった後も、過労死は後を絶たない。

 法案のもう一つの柱である同一労働同一賃金導入も、正社員と非正規の不合理な格差を解消するため、一刻も早い導入が必要だ。

 それなのに、国会論戦は深まらない。原因は、八つの労働法規を関連法案として一本化して、提出する方針にある。規制緩和が法案に同居していることが議論を複雑にしている。

 論戦の中心は、規制緩和の問題点になっている。高プロに加え、裁量労働制の対象拡大である。裁量労働制は実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす制度だ。

 野党は長時間労働を助長するとして、問題点を追及している。

 政府は批判をかわすのに躍起だ。安倍晋三首相は1月下旬の衆院予算委員会で厚生労働省の調査結果を示し、「裁量労働制の労働時間は、平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と述べた。

 野党は「調査は信頼性に欠ける」と指摘した。自身も引用して答弁していた加藤勝信厚生労働相は疑義を認め、「データを精査する」と引き取っている。

 政府に都合がいいからといって根拠が薄いデータを持ち出すのでは、野党から批判されるのも当然だ。政府は批判を真正面から受け止めて、真摯(しんし)に制度の是非を議論するべきだ。

 懸念されるのは、その影響で残業時間規制などの審議が不足することである。

 残業規制にも問題は多い。法案が上限にしている「月100時間未満」では、過労死をなくす目標には程遠い。同一労働同一賃金も、正社員との待遇格差がどの程度なら不合理なのか明確ではない。

 議論するべきことは膨大だ。残業規制と同一労働同一賃金制度の審議を優先して問題点を整理し、改めるべきところは改めて、少しでも早く成立させる必要がある。今国会で全てを審議し、採決するのは無理がある。規制強化策と規制緩和策の一括提案は取りやめるべきである。

(2月14日)

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